第5回復興デザイン研究賞 受賞者

復興国内外の復興に取り組んでいる個人、自薦・他薦合わせ20名の候補者に対して、彼らの主要論文・関連論文を推薦理由も参照し、審査員で評点付け、審査委員会にて受賞者を決定しました。

最優秀研究賞

大津山 堅介(東京大学)

国内外における事前復興計画と居住地移動 (Residential Mobility) に関する一連の研究

【受賞理由】気仙沼市全世帯を対象とした市内移住を定量的に明らかにした結果、凝集性の高い近傍移住が見られた地区や、津波・洪水リスクのある土地に災害公営住宅を建設することによって同一町丁目での居住継続ができた地区など、多様な地域特性を明らかにし、また、市外からの移住者がL2洪水のリスクのある低地に多く移転していることなどを明らかにしている。また、アメリカを中心に国外でも研究を進め、アメリカのFEMAやフロリダ州での事前復興や事前防災の取り組みについての日米比較を通して日本の課題を明らかにすることを試る一方で、気候変動など広い視野で研究に取り組んでいることから、復興デザイン研究に多大な貢献をしていると評価された。

優秀研究賞

浅野 純一郎(豊橋技術科学大学)

地方都市における減災・復興に関する都市計画的研究

【受賞理由】南海トラフ巨大地震に伴う津波被害想定区域における開発許可制度の運用や開発動向の研究を進めると同時に、東日本大震災後の集落における復興経過に関する研究も行い、今後迫られる津波防災まちづくりに向けた計画・政策的展開に貢献している。一方で、地方都市における戦災復興都市計画の計画理念の把握をベースに、長期的視点に立った復興都市計画の立案・実施に対して重要な知見を提供している。これらの研究成果は、縮退が進む地方都市の今後の計画検討において、非常に意義深いものであり、優秀研究賞にふさわしいと評価された。

柿本 竜治(熊本大学)

状況認識を考慮した令和 2 年 7 月豪雨時の避難行動に関する研究

【受賞理由】豪雨時の状況認識を考慮した避難意思決定をモデル化し、令和 2 年 7 月豪雨の被災地域でのアンケート調査データに適用している。モデル化では、自然主義的意思決定を援用し、状況分析段階と反応選択段階を設け、状況認識の失敗やヒューリスティックな意思決定を組み込んでいる。分析の結果、豪雨時の周辺環境に対する状況認識が、水平避難の重要な要素であることなどを明らかにしている。問題設定の難しい避難行動に対し、現場調査データをもとに、斬新かつ的確なアプローチにより有用な知見を導出しており、復興デザイン研究に大きく貢献していると評価された。

佐藤 慶一(専修大学)

大規模自然災害後の仮住まい状況ミクロシミュレーション手法の開発

【受賞理由】内閣府が想定する都心南部直下地震を用いた仮住まいのシミュレーションを実施し、市町村単位での住民参加型ワークショップを開催する際に参照できる計算結果の導出を行なったほか、擬似的ミクロデータを用いたシミュレーションでは誤差を±2千戸程度まで小さくするなど研究手法向上への寄与が大きい。さらに、首都圏における巨大被害想定に対して応急仮設住宅や既存賃貸住宅が十分でないことを指摘し、東京都や神奈川県などにおいて災害時の仮住まいのフローなどを行政と共に作成するなど、基礎レベルから実践レベルまでの復興デザイン研究に大きく寄与していると評価された。

奨励研究賞

該当者なし