第二回復興政策賞・計画賞・設計賞 受賞作品

2020年11月16日、復興デザイン会議第2回全国大会「復興政策賞・復興計画賞・復興設計賞」の最終審査委員会(審査委員長:羽藤英二)を実施し、厳正な審査の結果、受賞者9件(政策賞3件、計画賞4件、設計賞2件)を決定いたしました。

審査委員⻑ ⽻藤英⼆(都市⼯学)
副委員⻑ 乾久美⼦(建築設計)、徳永幸久(都市計画)
審査委員 岡村仁(構造設計)、⾙島桃代(建築設計)、近藤⺠代(建築計画・都市計画)、廣井悠(防災計画)、宮城俊作(都市デザイン)、安原幹(建築設計)⼭⼝敬太(⼟⽊計画)、渡部英⼆(復興事業)

復興政策賞

⽷⿂川市駅北⼤⽕における「修復型まちづくり」の早期実現

【受賞者】新潟県糸魚川市、独立行政法人都市再生機構

【事業概要】

平成 28 年 12 月に発生した糸魚川市駅北大火を受け、糸魚川市は早期復興を目指し、関係者が復興まちづくりに対する考え方を共有するための基本方針や、具体的な施策を取りまとめた「糸魚川市駅北復興まちづくり計画」を早期に策定。結果的に、それを評価した国土交通省が「今後の復興まちづくり計画の考え方」の 公表に至った。また、糸魚川市は復興まちづくりを推進するため、復興推進課を設置する等、庁内体制を整 備。それに合わせ、UR 都市機構は、経験や専門性のある職員を糸魚川市に派遣するなど、復興まちづくりに人的・ 技術的に支援した。

【受賞者のコメント】

被災者と段階的な意見交換をしながら、8 か月で「糸魚川市駅北復興まちづくり計画」を策定、復興に取り組んだことで、早期再建につながりました。国土交通省をはじめ全国からの支援が復興の力となりました。改めて感謝申し上げます。

津波被災市街地復興⼿法検討調査

【受賞者】国土交通省都市局

【事業概要】

 東日本大震災において被災した地方自治体の復興に向けた取り組みを支援するため、被災状況等の調査・分析を行い、その成果を地方自治体に提供するとともに、被災状況や都市の特性、地元の意向等に応じた復興のパターンを分析し、これに対応する復興手法等について調査・検討を行った。

【受賞者のコメント】

この調査は多くのコンサルタント職員、現地調査員、作業チームの地整・県・公共団体職員、そしてご協力をいただいた地域の方々のもと実施されたものです。この賞は調査にご尽力をいただいた多くの方々に贈られたものと考えております。ありがとうございました。

3.11伝承ロード

【受賞者】一般財団法人3.11伝承ロード推進機構

【事業概要】

東日本大震災の被災地に設置されている震災遺構や伝承施設を「3.11 伝承ロード」として結ぶ取り組み。東日本大震災の被災地に点在する被災の実情や教訓を学ぶための遺構や展示施設などによるネットワーク化を震災伝承ネットワーク協議会(東北地方整備局、被災4県、仙台市で構成)が行い、その施設やネットワークを基盤にして、防災や減災、津波などに関する「学び」や「備え」に関する様々な取り組みや事業を行っている。

【受賞者コメント】

今後とも『教訓が、命を救う』を基本メッセージとして、震災の教訓を伝える遺構や伝承施設を結ぶ「3.11 伝承ロード」構築による防災意識社会の実現と被災地の魅力ある地域づくりを使命として活動してまいります。

復興計画賞

花露辺地区復興計画

【受賞者】花露辺自治会、岩手県釜石市、独立行政法人都市再生機構

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【事業概要】

集落が要望した防潮堤のない集落再生を、リアス式の地形を生かして浸水区域内に防潮機能のある道路を整備することで実現した。また住まいの復興がスムーズに進むように、地区内の限られた土地を災害公営住宅、防災集団移転促進事業用地とし、仮設住宅を地区内に整備しなかった。高台に整備された災害公営住宅は、漁業集落の暮らしに配慮した設計となっている。移転跡地は漁業集落防災機能強化事業によって、水産関係用地として整備した。これらの総合的な集落の復興計画は市とUR 都市機構がH24 年3 月に協力協定を結び、推進した。

【受賞者のコメント】

この度、受賞の栄誉にあずかり心からお礼申し上げます。これもひとえに地元の皆様の復興への熱意と、関係する皆様のご支援の賜物と深く感謝申し上げる次第です。今後も益々地区の発展に尽くしてまいりますので、引き続き一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

気仙沼線/⼤船渡線BRT

【受賞者】東日本旅客鉄道株式会社

【事業概要】

東日本大震災の津波で大きな被害を受けた気仙沼線柳津・気仙沼間( 後に前谷地・柳津間延伸)、大船渡線気仙沼・盛間において、従来の鉄道をBRT(バス高速輸送システム)として運行再開したものである。本事業では、専用道と一般道の併用により早期の運行開始を実現した。鉄道敷の活用による速達性・定時性の確保や運行頻度を高める等利便性の向上、まちづくりの各段階に合わせたルート設定、駅の増設等の柔軟な対応を行い、地域の実情に合致した復興に貢献する持続可能な交通手段となっている。

【受賞者のコメント】

高い運行頻度、復興まちづくりの段階に応じた柔軟な路線・駅設定、鉄道とのシームレスな乗り換え、専用道による速達・定時運行の確保などを整備・運行計画に反映し、何より早期に実現することができました。あらためて地域の皆さまや関係機関・有識者の皆さまのご支援に心より感謝申し上げます。

釜⽯・平⽥地区コミュニティケア型仮設住宅の計画

【受賞者】岩手県、岩手県釜石市、岩手県立大学社会福祉学部狩野研究室、東京大学高齢社会総合研究機構、東京大学大学院建築学専攻建築計画研究室、東京大学大学院都市工学専攻都市計画研究室

【事業概要】

岩手県釜石市平田地区の仮設住宅。仮設住宅団地区域内には、高齢者ケアの場と診療所(「医」の領域)や被災した地元の商店やスーパー、事業所(「食/職」の領域)が建設され、また、高齢者同士が見守る・見守られる関係を構築できるように、向かい合った住棟の間にデッキと屋根からなる縁側のような空間(「住」の領域)が設けられている。

【受賞者のコメント】

大震災直後、医療看護系の先生方は既に現場で活躍中だが、それ以外の人に何ができるのか?この問いに答えるべく、孤独死しない仮設住宅の空間配置を目指して、関連の大学人、行政人が手際よく連携して成し遂げられた計画です。地元のお医者さんが身寄りのない高齢者に「平田の仮設だったら退院していいよ」と言ってくれたとか。

芦屋市若宮地区の震災復興住環境整備

【受賞者】岩若宮地区まちづくり協議会、芦屋市、江川直樹(当時:現代計画研究所大阪事務所)、後藤祐介(当時:GU計画研究所)

【事業概要】

芦屋市若宮地区は約2.3ha の既成市街地で、阪神淡路大震災により甚大な被害を受けた。被災した地域住民を中心として「若宮地区まちづくり協議会」が発足し、被災前の路地空間の雰囲気等を生かした復興を目指し、自力再建住宅と小規模な災害公営が分散的に配置された復興計画案を検討し、住宅地区改良事業によって施工された。また、公営住宅は自力再建住宅のまちなみに馴染むスケールと通り抜け等に配慮した設計とした。こうした計画によって、近隣同士の日常的なつながりが維持され、満足度の高い復興に寄与している。

【受賞者のコメント】

行政・住民・専門家が三位一体となって取り組み、密集市街地における複雑な権利調整、事業推進、及び既成市街地に馴染んだ住環境の再編が成就しました。「新しいが懐かしい」まちの穏やかな日常が現在も継続しているのが嬉しいですね。

復興設計賞

釜⽯市東部地区復興公営住宅(天神町・⼤町1号・⼤町3号・只越1号)

【受賞者】株式会社千葉学建築計画事務所、大和ハウス工業株式会社 岩手支店、岩手県釜石市、東北大学大学院工学研究科小野田泰明研究室

【事業概要】

釜石市天神町に計画された災害公営住宅。4 階建て集合住宅で,天神町仮設住宅との隣接地に整備された。共用廊下・ベランダの位置を上下階で反転させることにより,上下階での視線のやり取りに配慮している他,リビングアクセス型の間取りとするなどの試みが行われている。「建物提案型復興公営住宅買取事業」による事業であり,ハウスメーカーと建築家が協働したプロジェクトという点でも特色がある。

【受賞者のコメント】

復興という過酷な状況下において建築家に何が可能なのか、またデザインとは何なのか、そのことを自問自答しながら取り組んでいた計画です。たくさんの苦労もありましたが、このような賞を頂き、大変ありがたく、また今後に向けての励みにもなりました。どうもありがとうございました。

甲佐町営⽩旗団地・⼄⼥団地災害公営住宅

【受賞者】シーラカンスK&H株式会社、熊本県、甲佐町

撮影:淺川敏

事業概要】

熊本県甲佐町にある災害公営住宅。2 戸1 の住棟を敷地内にずらして配置することで、周囲のスケールに合わせた農家型災害公営住宅である。白旗団地・乙女団地共に、3 種類の住戸タイプからなる同じ構成の住棟を、敷地に合わせて配置している。また、構造材や仕上げ材などは地場産材とし、地場工務店で施工しやすい設計になっている。

【受賞者のコメント】

部屋を準備するだけでなく日々のなりわいとの協調が、持続可能な地域復興につながると考えています。造園や田畑での作業と住まい方を考慮し「農家型災害公営住宅」として、小庇や土間といった空間が、農作業を主体とした生活を室内につなぐ居場所となっています。