第13回復興デザイン研究会の報告

難民キャンプと復興デザイン Understanding Refugee Camp

東日本大震災を契機に、これまでの工学的技術を統合して、新たな復興デザイン研究を築くために、復興デザイン研究会を開催しています。第13 回は、ギリシャ(シリア難民)とバングラディシュ(ロヒンギャ)の難民キャンプの実態について、現地で研究・支援活動されている専門家に話題提供いただきました。

開催概要

日時: 2018年2月7日(水)16:00〜18:00
場所: 東京大学・本郷キャンパス・工学部14号館222号室
テーマ:「難民キャンプと復興デザイン」
1)Refugee Camps: the non-place fallacy
Dastid Ferati( Urban Engineering Department,) in English
2)ロヒンギャ難民キャンプの実態と今後
下澤 嶽( 静岡文化芸術大学文化政策学部教授・平和構築NGOジュマ・ネット共同代表)

主催:東京大学復興デザイン研究体

報告

 近年、中東問題などで難民問題が世界に共通した課題として注目されている。本研究会では、日本では直接的に晒されることのない難民問題と難民キャンプについて、現地で調査や支援活動を行う専門家を招聘し討議を行った。

 まず冒頭に、窪田より本研究会の趣旨の説明があった。難民問題が顕在化する中、空間計画の観点からできることがあるのではないかという点について問題提起がなされた。

 Dastid Ferati 氏からは、難民キャンプの成り立ち,難民キャンプの計画概要,自身が調査したギリシャにおけるシリア難民によるキャンプ内での住まい方,特にシェルターの外に友人が集まるための空間を自らつくりだしながら居住環境を改善しようとする実態について紹介があった。

 一方下澤氏からは、1992 年から繰り返されてきたロヒンギャ(ミャンマー)に対する焼き討ちなどの事件によって発生するロヒンギャ難民について、「ロヒンギャ難民事件と背後の政治構造」 の観点から現地での支援活動を通して見えてきた実態についてお話をいただいた。こうして25年以上にも渡って繰り返される難民の発生とその後の帰還の裏には、ミャンマー政府や受入国であるバングラディシュ政府の政治的思惑があるとの説明があった。国際機関の介入が進んでおらず、未登録のキャンプが生まれている状況などについても紹介があった。

 討議では、主にロヒンギャの状況について、難民の生活実態(生業など)についての質問や、政治に翻弄される中、祖国に帰ることの現実性や難民自身の意志についての質問、外部支援によって何が可能なのか、という観点からの質問が出た。下澤氏は、外部支援者やジャーナリストなどが現地に入り、情報を世界に発信することが、政府の動きを監視し、抑制することにつながると見解を述べた。また、受入国のバングラディシュとロヒンギャは文化的(言語的)にも近く、親和性が高いこと、そのためバングラディシュで新たな職について生計を立てるような事例もあるとの説明があった。近い将来帰還支援が進められるが、その際の再定住地の整備についても、ロヒンギャ問題に対する政府の思惑が働く可能性があり、注視する必要があるとのことであった。

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