第4回復興研究論文賞 受賞者

復興国内外の復興に取り組んでいる個人、自薦・他薦合わせ27名の候補者に対して、彼らの主要論文・関連論文を推薦理由も参照し、審査員で評点付け、審査委員会にて受賞者を決定しました。

最優秀論文賞

田中 正人(追手門学院大学)

減災・復興政策による社会的不平等の拡大抑止に向けた一連の研究

【受賞理由】阪神淡路大震災で生じた「孤独死」の発生メカニズムの研究を通して、①孤立化促進の3要素「無就業」「未婚」「アルコール依存」のうち、「アルコール依存」が死に直接関係し、②応急仮設住宅では家族や近隣のコミュニティが孤立のリスクをカバーする面があったのに対し、復興住宅ではいずれの担い手の機能も後退し、より深刻な「孤独死」を発生させてきたこと等を明らかにした。その後も、中越地震における集落移転、東日本大震災の原発避難者の居住地選択、広島土砂災害の再定住地の選択状況等に関する研究を継続的に行い、その成果を『減災・復興政策と社会的不平等』としてまとめ、復興プロセス改善のための具体的な要素を示すことで格差是正に向けた知見の構築に大きく貢献した。

米野 史健国立研究開発法人 建築研究所

借り上げ仮設住宅に関する一連の研究

【受賞理由】東日本大震災ではじめて大規模に採用され、その後熊本地震においても採用された、借り上げ仮設住宅に継続的に着目し、被災者の借り上げ仮設住宅への入居から退去後の住宅再建に至る一連の過程をアンケート調査や賃貸借契約書等の情報をもとに丹念に分析しており、これまでの震災では利用が少なく既存研究がほとんど存在しない借り上げ仮設住宅の実態に関する重要な知見を、継続的に蓄積していることが高く評価された。仮設住宅入居後の生活が安定すれば、住宅再建も円滑に進むことが期待され、今後の対応策を考える上で復興デザインに多大な貢献をしていると評価された。

優秀論文賞

中居 楓子(名古屋工業大学)

津波リスクと平常時の利便性のトレードオフに関する研究

【受賞理由】被災後のまちづくりでは、災害のリスクの低減と日常生活の利便性の両者を考慮した都市構造が求められる。本研究は、最適居住地配置モデルを利用して、これらを両立させる居住地域配置とトレードオフ構造を論じている。実都市対象の試算より、居住地の集約の必要性等の知見を得ている。被災後は災害リスク低減が重視される場合が多いが、「安全性を最重要視したまちの姿」「津波のリスクをある程度受け入れたまちの姿」等を具体的に描くことで、関係者の協議を支援しうる研究成果と考えられる。復興土地利用計画や事前復興の立案・検証等に有用な示唆を与える理論研究であり、賞にふさわしいと評価された。

益邑 明伸(東京都立大学)

産業空間の被災状況と復興プロセスに関する研究

【受賞理由】東日本大震災後の岩手・宮城県において、被災した産業と復興施策との関係に着目し、経済センサスの個票データ分析を通して、面的再整備事業区域、災害危険区域のいずれにおいても区域内外の事業所の存続割合に有意な差があることを明らかにし、面的再整備事業の実施や災害危険区域指定といった公的な政策が、事業所の存続を阻害する要因になりうる点を示唆した点が高く評価された。さらに、公的政策と事業所の復興プロセスの関係に着目し、釜石市、大槌町、大船渡駅周辺を対象とした綿密なケーススタディを通して、事業者の制度利用実態把握と、それをもとにした、地域の状況に即した産業復興施策のための知見を提供している点が、復興デザインに大きく寄与すると評価された。

奨励論文賞

川見 文紀(同志社大学)

大規模災害による生活再建要支援世帯に対する支援に関する研究

【受賞理由】東日本大震災における被災者の社会的属性等に着目し、被災前の世帯の社会的脆弱性が住まいの再建に与えた影響について2015 年の名取市現況調査の分析を行い、ジェンダー・被災前の職業・世帯人数等の社会的脆弱性変数とその交互作用を独立変数とし、すまいの再建の早さに与える影響の分析を行った結果として、シングルマザーと考えられる女性世帯主かつ 2~3 人の世帯規模の場合に、すまいの再建が遅れることを示した。さらに、仮設住宅の種別の違いが住まいの再建に与える影響を、因果推論の手法を用いて解明することを試み、被災者の生活復興感に与える影響を分析し、一連の研究を通して災害ケースマネジメントに関する有益な知見を提示した点が評価された。

増田 慧樹(東京大学)

空間整備コストと避難完了人数のトレードオフを考慮した復興都市計画のパレートフロンティア分析

【受賞理由】本研究は、避難行動モデルと交通ネットワーク設計モデル等の分析技術を利用した過去の復興都市計画の事後評価の手法を開発している。提案手法を三陸沿岸に適用し、実際の人口分布と、チリ地震津波以降の高台移住施策が現実と異なる仮想状況を想定した人口分布シナリオで結果を比較し、過去の復興都市計画を評価している。そして、過去に実施された道路整備の最適性等を検証できることを提示している。最新で高度な交通分析技術を史的研究に応用する計量交通史と呼びうる分野への貢献も認められる。復興都市計画の定量評価に資する基礎理論的な研究として、賞にふさわしいと評価された。